所得税改革により、サラリーマン大増税の時代が来る
2018年に改革が行われた給与所得控除の見直しについて、動画で解説してます。現状では、年収850万円以上のサラリーマンが対象ですが、今後、広がる可能性もあります。サラリーマンの家計にますます厳しい時代が来ようとしています。
日本人のライフスタイルは大きく代わり、今までの常識は通用しなくなります。少子高齢化問題がますます深刻化してきます。2025年には団塊の世代が75歳を超え、後期高齢者の割合が一気に増えます。超高齢化社会の到来です。団塊の世代は約800万人います。年金をはじめとする社会保障費が増大していきます。
今現役世代の将来の年金はほとんどない可能性もあるでしょう。
年収850万以上は実質増税
先日こんなニュースがありました。「給与所得控除を見直す」と言うニュースです。
NHKニュースウェブ
サラリーマンに適用される、「給与所得控除」を一律10万円削減し、年収850万円以上のは195万円で頭打ちとすると言うものです。この改革では特に年収850万円以上の人が実質増税対象となります。給与所得控除が分からないという人もいるでしょうから、まずはそちらから簡単に説明します。
サラリーマンの所得税計算方法
サラリーマンの給与には様々な控除制度があります。その控除制度のおかげで、所得税がかなり軽減されています。私は初めサラリーマンをやっていましたが事業主になって驚いたのが、所得税の違いです。事業主として働き始めてから、サラリーマンとして給与をもらっていた時よりも、同じ様な収入だったとしてもはるかに高い所得税を納めなければならないからです。
実際は経費などで圧縮することが可能ですが、キャッシュが手元に残らないので現金を残そうとすればかなりの税金を支払うことになります。そういう意味で様々な所得控除が用意さえているサラリーマンは羨ましいなと思います。その1つが、「給与所得控除」です。日本の所得税は累進課税制度ですから、所得が高ければ高いほど税率は高くなります。
「年収」と「所得」の違いは、「年収」は税込年収や額面年収などと言われ支給されている給与総額の事です。「所得」とは額面ではなく、配偶者控除や医療費控除などの様々な控除が考慮されたあと最終的に残った金額です。所得税は「年収」ではなく「所得」にかかります。ですから控除が沢山あれば所得税率が下がり収める税金も減ります。
ちなみに所得税率は下記の図を参照下さい。
所得税を計算しますと、例えば所得が500万円の人は、上の図で行くと、
所得金額が500万円の場合の所得税計算
500万円×20%−42万7,500円=57万2,500円
毎月に直すと、47,708円/月ですからかなり高いですね。ただし、上にも書きましたが、所得税は「年収」ではなく、「所得」に適用されます。
通常ですと、年収から様々な控除を引くことができますので、最終的に所得税がかかる部分(課税対象額と言います)はかなり少なくなりますから、実際の所得税額は抑えることができます。例えば控除できる項目を下記に並べています。
- 給与所得控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 配偶者控除
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 住宅ローン控除
他にも障害者控除や勤労学生控除などの控除もあります。給与所得控除は控除の中でも最大の控除項目です。一番金額が大きくサラリーマンの手取り収入に直結します。その控除金額が今回見直されたと言うことです。
増税の議論となっている給与所得控とは
給与所得控除は、会社員の所得控除の中でも一番大きな所得控除になります。
まずは下記表を参考下さい。
年収500万円の人の給与所得控除の具体的な金額を計算してみます。
年収500万円の人の給与所得控除金額
500万円×20%+54万円=154万円
つまり何もしなくても、154万円は年収から引けるという事です。非常に大きいです。
事業主であれば、事業に関わる経費を年収から引くことが出来ます。商談費用や、事務所賃貸費用や、社用車の維持費、通信費などです。サラリーマンの場合、経費をそれぞれの会社ごとに計算していると業種や業務によって処理の仕方も変わりますし税務署や役所の作業が煩雑になりすぎますので、あらかじめ一律に経費を引ける様になっています。それが給与所得控除の位置づけです。しかし大きいです。
給与が高い人ほど控除金額も大きくなります。日本は累進課税ですから収入が高くなれば所得税率も高くなります。しかし会社員であれば給与所得控除の金額も大きくなりますからそこまで納税額が大きくならないのです。
所得税控除の見直しは実際どの程度?
年収850万円以上のサラリーマンの給与所得控除が見直されました。実際にどの程度の影響があるのか計算してみますと、例えば年収1000万円のサラリーマンの所得税は、約107万円となります。今回の改正では、給与所得控除の上限が195万円となり、所得税額は約113万円となります。したがって、年収1000万円の人は約6万円の増税となる見通しです。これまでよりも毎月5,000円多く所得税を支払う事になります。
※基礎控除と給与所得控除のみ適用の場合です。人によって実際の納税額は変わります。
消費税も上がり、所得税も上がり、相続税も実質上がりました。個人にかかる税金はどんどん上がっています。この傾向は今後も続くでしょうし、しっかりと自己防衛していかなければなりません。
これからは増税、自己負担増の時代
今、少子高齢化問題が盛んに報道されていますが、日本はまもなく世界的一の超高齢化社会が到来すると言われています。アジア諸国では平均年齢が20代の国が沢山あります。かつての日本がそうだったように若者で街が溢れ活気があり、国民全員が働いているような国です。そのような国の経済は非常に成長していきます。日本の平均年齢は40代です。今後ますます高齢化して行くでしょう。
何が問題かと言うと、国の財政の問題です。国からすると働く人口が減りますから税収は減ります。一方で介護や年金などの受け取る人数はどんどん増加していきますから支払いは増加していきます。つまり、収入が減るのと同時に支出は増えると言う財政状態になるのです。今でも毎年のように国債を発行し大きな借金を作っていますから財政赤字と問題になっていますが、今後さらに経済が悪くなることがほぼ確実な状況です。
だからこそ、収入を増やす(あるいは維持する)ことと、支出を減らすことを推進しています。それが消費税の増税や、相続税の非課税枠縮小、年金受給額減額、医療費補助の減額などに繋がっているのです。その1つが今回の「給与所得控除の見直し」となります。
ですから単純に高給取りのサラリーマンだけの問題ではありません。今は年収850万円以上の人が対象となりますが、これだけで終わるとは到底思えません。国は段階的に進めて行くからです。いきなりドラスティックに変えることはしません。おそらく今後中間層のサラリーマンにも何かしらの増税がある可能性が高いです。
確実に言えるのは、これからは増税、国からの補助減が同時に進められる時代だと言うことです。気付いた時には茹でガエルのように、貯金も資産もなく老後も働き続けるしかないと言うような自体にならないよう、少しでも早いうちから経済的な自己防衛をしていかなければならない時代なのです。